2006年頃に書いた文章です。

法医学のすごさは、見ていない人にはまったくわからないとは思うのですが、私は法医学番組が大好きです。USでは、Forensic Files, Trace of Evidence, American Justice, City Confidential, FBI Files, New Detectivesなどなど、数えるとキリがないほどの番組があります。

私のパートナーは、藤田まことの『はぐれ刑事純情派』を見ていても、最後まで犯人がわからないぼーっとした人なのですが、私はアレだと最初の3分から5分でわかってしまいます。幼い頃、図書館の子ども部門のほうにある江戸川乱歩と横溝正史を読破したことがあり、さらに高校2年までには、文庫で既存していたふたりのものはすべて読んでいました。他にも何人かのミステリは読みましたが、大人になってからは純文学を好んで読むようになりました。例外が、Robert B. Parkerで、今はそれにJonathan Kellerman(心理学者のAlex Delawareシリーズ)とPatricia Cornwell(Kay Scarpettaシリーズ)が加わっており、日本の作家でも、東野圭吾と宮部みゆき以外のミステリは読んでいません。

事実は虚構よりも奇怪なり、というのは本当で、いくつもある殺人事件のクロースアップと(Close-upは、くろーず、ではなく、くろーす、という発音が正しい)、どうやって推理・証明して導くか?というのは、毎日の頭の訓練にもなりおもしろいのです。亡くなった方々を軽んじるわけではなく、科学者の端くれとして(社会科学ですが)、日々、技術が進歩していることをきちんと見ていくのは、自分への警告でもあり、この時代に生まれてよかったな、を実感することでもあります。さらに、私が専攻した心理学のプロファイリングなど、実感としての法則性を磨くためにも、とてもいいことです。

私が尊敬しており、リンクも貼ってある Dr.Henry Leeは、台湾で生まれ台湾で育ち、台湾大学を政治科学で出たあと、アメリカに移民してきます。警察学校を出たあと、センスを認められ、警邏(けいら)をしているあいだに、学校に行くことを薦められます。Conneticut州の学校を出て、PhDをやっと取り、警察の事件現場でたたき上げたセンスと技術は並ではなく、日本でも有名になった事件の7割ほどは手がけているのではないでしょうか?海外に招かれることも多く、台湾での現大統領が再選のときに負傷した事件で、彼は涙ながらに、自分が属していた(今も気持ちとして属している)党派にあえて不利な発言をします。科学者はこうでなければいけない、という鏡のような人です。

さて、彼のすごさを思い知った事件というのが、Helle Craftというフルとハンザ航空のスチュワーデスが殺されたときの事件です。遺体なしでの起訴までこぎつけ、加害者の夫は有罪になりました。Helleが事前に、浮気癖のあるだんなの素行調査を行っており、「私がいなくなったら彼に殺されたと思って」と友だちに言い残していたことから、遺体探しを始めるのでした。押収した物品のなかに、だんながレンタルした Woodchopper(木や枝を入れてその場でガリガリと砕く機械)があり、それから、地域すべてを捜索し、川原までたどり着きます。無数のカケラが川に届かず、バラバラと川原に残っており、その1平方センチもないカケラをすべて分類し、そこからHelleの遺体の一部だということを証明してしまいました。決め手になったのは、彼女がしていたマニキュアの塗料の化学合成が、家に残されていたマニキュアと一致したことと、彼女の歯の詰め物のカケラの一部が彼女が通院していた歯医者が好んで頻用していたものであったことと、たまたま見つかった骨髄の一部からDNAを検出してしまったことと、髪の一部が見つかり、家のヘアブラシについていたものと顕微鏡一致したことです。

あんな細かい作業は、私には到底できませんや…>これ、画像を見ないとどれくらいのカケラかわからないんだけど、カケラの数として10万以上。

さらにすごいな、と思ったのが、血液凝固を調べるために、自分の血液を1リットルも平気で抜いてしまうこと(笑)。そして、平気な顔をして、凝固状態をタイムし、顕微鏡を眺め、記録に残します。誰が見ても、殺人現場だと思えない、ピカピカのお部屋を、イッパツで殺人現場だとわかってしまったり、どんな順番で犯行が行われたのかを、血痕でわかってしまうところが、彼のセンスと勉強の賜物です。

これらの番組を見ていると、私はまだまだ細かいものに目を向けて暮らしていないなぁと思えます。でも、最近では、東野圭吾や宮部みゆきくらいだと、ちゃんと犯人は前半のうちにわかっちゃいます。法医学番組を見ててさらに勉強になるなぁと思うのは、自分が危ない場所に危ない時間に行くことが決してないように注意が向けられるようになったことや、人を見る防衛力がついたことです。心理学を学んだせいもありますが、トラブルになりそうなことを事前にわかったり、メンツはともあれ、トラブルが起きそうな場面になる前に予測がついてしまうようになったこと。

法医学で今では世界中で使われている Superglue techniqueというのは、日本が発祥です。アロンアルファ系の塗料を使っている部品会社に勤めているエンジニアが、事故で、自分たちプロジェクトチームが計測をしていたときに、指紋がぐわぁっと浮き上がってきたことが始まりだそうです。そのプロジェクトチームのひとりの男性が、友だちである医者に話をし、その知り合いである警察関係の人に伝え、そうして指紋採取の、簡単で効果の高い技術となったんだそうです。それを、今では、全身の Palm print(手のひら)などに使う例もあり、テクノロジーは確実に日々向上しています。

私が殺されても犯人は必ず見つかってしまうことになっています。ネコに囲まれて暮らしており、ネコのDNAは犯人や車や他の物品に二次付着することから、たとえ殺されても犯人は見つかります。もー、毎日毛を完全に取って外出することもできず、私はネコの毛だらけできっと外出してるんでしょう…。法医学ありがとう…。

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