1998年くらいに書いたものです。

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これはある人たちに現実に起きている日常で、私がよく見ている American Justiceという番組のテーマのひとつでした。

事件映像ご注意

この話は2つのエピソードがあり、後半が、自分の息子を数年に渡り、性虐待されていた父親が、加害者が逮捕され、空港で白昼、拳銃で殺人する、というインパクトのあるストーリーを取り上げています。Louisiana(ルイジアナ)でのお話なのですが、その父親はその場で逮捕され、TVカメラにもその瞬間を撮影されました。10年以上前の事件です。

当然、殺人はいけませんや・・・。が、市民の気持ちとしては、その父親を痛いほど理解でき、ヒーロー扱いするメディアまでありました。結果としては、その父親は、一時的精神錯乱にあり、犯行時に善悪の区別がつかなかったという精神判定を受け、Pre-bargain(裁判になる前の起訴前のやりとり)で、Man-Slaughter(殺人であるが、1級でも2級でもない、次の段階のもの)を受け入れ、300時間のCommunity Service(無料での社会奉仕)と、5年間のProbation(執行猶予)を受け入れ、以来二度と法に触れることなく、息子や家族と穏やかに暮らしています。

が、Child Molester(幼児性虐待者)である加害者の弟が出てきて、その法的措置に対しての不正義を叫んでいます。気持ちはわかるが、なぜ裁判での判決を待てなかったのか?と。殺人は殺人なのだから、父親は当然刑務所に入り、罪の償いをすべきだ、と。

結果的には、その父親は有罪ではあったけれども、かなりマイルドな扱いを受けることができたわけです。すべての判決がこうであるとは限りません。Louisianaでは、第一級殺人の条件である Premeditation(犯罪の計画性)の定義の解釈が、多少、他の州よりゆるいことがあるからです。よその州でこれをやったら、死刑になることもあるでしょう。陪審員制度では予測はついても、結果は本当にわからないものです。

これがもしも100年以上前の西部劇のような舞台であれば、父親は確かにヒーローなのでしょう。日本でも大昔には、仇討ちは法に則っていました。あなたならどうしますか?と問われ、当然、殺人までやらない人は多いです。が、殺人までしてしまった人の気持ちは、わかる人も多いでしょう。が、涙を飲み、法治国家のなかでのシステムを機能させるため、Louisianaの検察がしたことは、Pre-bargainでした。その中には、もしも裁判になれば、性的虐待を受けていた息子も、証言台に立たなければならず、そうなれば、検察側の論理を陪審員がなかなか受け入れにくい状況になることを、深く配慮してのことです。ある一人の大人がすでに彼の人生を大きく傷つけ、さらに父親の感情的行為が息子を傷つけ、今度は州や国が彼を傷つけることになる、というのは避けたほうがいい、当然の処置だったと思います。

が、ひとつが立てば、もう一方が立たない。加害者が、ある瞬間から被害者になり、その遺族は腹立たしさや悔しさや悲しみをどこにももって行くことができなくなりました。残念なことに、少しだけ正当性があるのは、性的虐待は相手が幼少児であったとしても、殺人には値しません。ですから、殺された遺族としては、不公平感はぬぐえないわけです。愛する人を亡くすだけでも、たいへんなことなのに、さらに、その愛する人が、性的虐待者であり、そのせいで殺されたとなると、遺族の心の傷は想像に絶するものがあります。

さて、ここで私のテイクは?

私は感情に支配され続けてきた野生馬で、そののち、やっと自分で自分をコントロールできる術を身につけたので、父親と同じことをしていたかもしれない、という疑問の余地もあります。そんな非常時に、感情をコントロールできるか?という問いに、100%の自信を以って、はい、とは言えません。が、現在まで、先人の英知の恩恵を受け、せっかくの法治国家を機能させていこうとしている中、やはり個人の手に正義がゆだねられていい、という事態は困ります。私はこの結果は、父親がラッキーだっただけで、いつもこうなるとは限らないいい例だと思っています。かと言って、幼い子どもが性的虐待を受けていることに、「しょうがない」とは全く思っていません。どうにかして、法のもとで解決することができれば、と願う気持ちは止みません。さらに、性犯罪が防止できる環境を提供していく社会の結束も強く願っています。

マスコミ運動をすることや、個人レベルで話し合いをすること、いろいろな方法があると思います。が、こういった事件は、よそで起きているだけのことではなく、いつ自分や自分の愛する人たちに起きても不思議ではないのですね。私は、何かが起きる前に、他人事と思わずに、考えてみる癖がつきました。それでもたくさん失敗はしています。どうやったらとことん、自分に自分で責任を取ることができるのか?そう考えていくと、やはり果てしないです。が、どんなことも、答えは自分の中にあること、もう一度認識してみてください。

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この父親が去年亡くなったので、少しニュースになりました。私が読む英語のニュースに載っていて、少し胸が痛みましたが、彼のその後の人生はとても充実したものだったようです。誰も正解などは持てないことでしょうが、自分に置き換えて考えてみることは大切です。残された家族たちも、父・男・人である彼をとても深く愛し、悲しみを乗り越えて暮らした様子が伺われます。

目には目を、歯には歯を、を続けていくとキリがない。けれども、人は感情が先んじてしまう動物でもあります。私もそれを諌めて日々暮らしています。

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