04/24/2006 にアップした文章です。

Bowlbyのアタッチメントセオリーは、1969年に発表されたものなので、37年が経過しています。Bowlbyの論理に正当性があるかどうかは、鳥のimprinting(最初に視界に入った動くものを親とみなし、追いかける傾向)、おサルの赤ちゃんの母親を、ぬいぐるみとワイヤーの2つでの発達を比較したもの、などで証明されてきました。ぬいぐるみとワイヤーを取り付け、哺乳瓶を取り付けたにも拘わらず、けなげなおサルの赤ちゃんたちは、ワイヤーの母を振り返り、安全基地とみなし、行動範囲を広げていったのです。ぬくもりや感触、匂いなどに左右されるかどうかは、また細かな話になりますが、「接触と心地よさ」がたとえ多少欠落していても、赤ちゃんは、Primal Caregiver(根本的、主要な世話をする人)をひたすら求めるのです。

人間ではこの実験は倫理委員会のコードに触れるのでできません。が、オオカミに育てられた少女や、虐待で言葉を教えられず、鎖に繋がれた少女の例など、事故として実際に起きてしまった例たちを鑑みると、この心理的「安全基地」は必須であることが結論づけられます。その後の、大いなる可能性の発育は別問題です。いつか後日、細かいことが書ければいいですが、今日は基本の基本を。

Ainsworthは1976年にStrange Situation(異質状況)という実験を行い、子どもに危害を加えることなく、アタッチメントについてさらに追求しました。対象者はすべて1歳から2歳。短い8段階を用意し、3つのアタッチメントパターンに分けるヒントを読み込む、というものでした。

このAinsworthのアタッチメントスタイルは、その後の性格の発達、人間関係の構築、恋人との接触や結婚生活やのちの子育てにも関連性がある、という資料は、他のいろいろな学界論文にて発表されています。なのに、Googleの日本語で検索しても、あんまりヒットしないんだよなぁ・・・。不思議だ。どんな育児書が日本で流行っているのだろうか?>本屋さんに行くことがあってもチェックしない私が悪いんだろね・・・。

場所は、1歳から2歳児がよく訪れる医者の待合室。そこで、母といっしょに入室した子どもたちの、気質(Temperament)をまずチェック(1)。母親といっしょであれば、まったく動じないというスケールから、異質な環境に対しての怯えまで、細かに分けていきます。その後、その異質状況にどのように慣れていくのかを3分間ほどチェック(2)。ドアがノックされ、看護婦さんらしき人が母親の隣に座り、3分ほど話します(3)。ここで、母親だけが部屋を去り、赤の他人とふたりだけで3分間を過ごします(4)。部屋には小児科用のおもちゃなどが置いてあります。その後、母親が戻ってきて、何もなかったように椅子を引き、赤ちゃんから意識的に距離を置きます。(5)。が再び、母親はいなくなります(6)。3分間です。ここで、さきほどの赤の他人が戻ってきて、母親と同じく、何もなかったように椅子を引き、赤ちゃんから意識的に距離を置きます(7)。3分ほど、赤ちゃんをチェック。そして母親が最後に戻ってきて、他人は去り、またも何事もなかったかのように振舞います(8)。

この8段階で、赤ちゃんの気質や反応を測り、アタッチメントの種類を査定するわけです。

大まかに分けて、3種のアタッチメントスタイルにし、その後、さらに細かく個人査定をするのが目標ですが、便宜的には3つの基本形があります。

1) Secure (確実な、しっかりした、保証された); 赤ちゃんは、異質の環境と他人の登場に対して、バランスの取れた行動をします。異質な部屋では、母親を安全基地として、認可をもらう目線を求め、部屋をハイハイしたり、他人が入室しても母親と他人の距離を、母親の目やジェスチャーで測ろうとします。母親を離れて、部屋でひとり遊びを展開しようとしたり、他人と母親の距離を測った結果により他人にもちょっかいを出そうとしたりする行動を示します。母親が2度戻ってきたときにも、母親とのアイコンタクトのみか、ちょっとしたスキンシップで戻ったことに対する歓びを顕した後、すぐさままた遊びに夢中になるのが、このタイプです。

2) Insecure-avoidant (不確実な、安定しない逃避型); 赤ちゃんは、母親よりは環境の異質さに注意を多く払います。がゆえに、母親が部屋を出入りしても、それに注意力を向けることができないことが多くなります。この原因としては、母親の赤ちゃんへのシグナルがわかりにくいことや、母親の愛情表現があいまいなこと、などが挙げられています。が、先天的なものも大いに関連しています。独立心がもともと大きな先天性があれば、このタイプになり、愛情やシグナルを欲する時間よりも、質を問うことが重要になります。母親が戻ったときにも、母親には注意を払わないので、環境に落ち着いたあとは何もなかったように振舞います。他人と母親への反応の差があまりありません。

3) Insecure-ambivalent (不確実な、安定しないアンビバレンス(両面価値並存);赤ちゃんは、母親を欲しているのにそれが表現できず、泣き叫んだりします。母親が戻ってきても、泣き止むことができなかったり、抱きつきたいのに距離をわざと置いたり、感情の振幅の差が多い行動を多く示します。他人などはもってのほかで、まったく無視し、却ってその存在が泣き叫びを助長します。

いまさら、大人になってから自分がどんなアタッチメントスタイルだったのかは、なかなか想像できないし、不確実な推測ばかりになることでしょう。これを元にした、大人のアタッチメントスタイルがあります。

1) Secure (確実な、しっかりした、保証された); 信頼に重きを置いた、長く続く人間関係を持っている。平均以上の自己尊敬心(Self-esteem)を持っている。自分の内面の深い部分を、他とシェアすることに違和感を覚えない。

2) Insecure-avoidant (不確実な、安定しない逃避型); 親密になることに対しての恐怖心が強い。人間関係において、情緒を投資することはあまりしたくない。考えや感情を他とシェアすることを躊躇する。

3) Insecure-ambivalent (不確実な、安定しないアンビバレンス(両面価値並存); 他人と親密になることに対して、その望みは強いが、実際に行動に移しづらいと感じている。友だちや恋人が自分と同じ愛を返してくれるかどうかを、いつも気にしている。人間関係が終わると、生活が崩れ、立ち直りにとても時間がかかる。

さて、あなたはどれだったでしょう?日本人の子育てスタイルの「本音と建前」を考えると、発達心理学の文化圏ごとの追っかけ研究では、日本人はやはりAmbivalentの割合がとても多かったのです。専業主婦の子育てをしている母親が多かったことや、社会生活の行動範囲が少ない大人が行動範囲を決めて子育てをしている、ということが、主な原因に挙げられていますが、その細かなところは追求しきれていません。

もちろん、この3タイプで人を分けてしまうのは簡単すぎます。たいていの人々は、これらのタイプの間に入るものです。が、こんなアタッチメント、愛着の分け方を日々追求している人々もいるのだということを知り、さらに、毎日の自分の人間関係や、世界観に生かしていけたら、かなりオトクだぞ、と思うのです。

私は、悲しいことにまっすぐな子で、Secureアタッチメントでした。が、オロチのように曲がりくねった青春時代に人間関係に悩んだのち、アメリカに来てから、ずっと、Secureなアタッチメントを続けています。私の安全基地は、西さんで、そのことは彼がもしも死ぬことがあっても変わりはありません。離婚しても同じです←予定はないですが・・・(笑)。