03/07/2007 にアップした文章です。

 

やっと来ましたよぉ、横田基地にアメリカ人が♪私の業務は、3週間のお暇をいただいていたのですが、再開しました。その間、歯ブラシ除菌器のプロモーションの方向転換をし、かなりの好転を見て、けっこう喜んでいるところです。横田基地まで、調布駅からの所要時間は相当にあり、「あー、失敗したなぁ。新宿あたりの通訳だってたくさんあったじゃん」と思えることはしばしば。たとえ混んでいたとしても、新宿駅までならば、調布からはわずか16分なのでした。そこから歩いたとしても、都庁あたりのオフィスであれば、家から40分見れば充分通えた・・・。うーん、マヌケである(笑)。今、エッセイの貯め書きをするほど忙しく、電車の中では読書に勤しみ、スケジュールを考えることくらいしかできないので、ここがイチバンのジレンマなのであった。

さて、通訳そのものですが、建築用語はすごいよ(笑)。私は18年半、アメリカに暮らしたことになるのですが、それでも不思議な単語にまだまだ遭遇するわけです。心理学をやっていて、生理学や生物学など、相当にラテン語関係も網羅したはずだし、GREのテスト勉強もやったので、けっこう語彙には自信があったのですが、「コレ、どうやって訳すのよ?」どころではなく、「意味わかんない」レベルの単語多し・・・。それも、建築現場での職人さんたちの知恵と、エンジニアリング系の語彙であるからのようです。

ボルトやナットの「力」を考えたときに、3つの力を測るテストがあり、同じStrengthでもTensile, Shear, Proofと3種もあるのよ。方向性だったり、素材だったり、まぁ、面倒なこと(爆)。でも、現場の職人さんたちは、そのボキャブラリーなしに知識として知っており、けっこう困った・・・。問題は、横田基地なので、ベースの検査官が、予算として承認されるのかどうかをしっかり査定せねばならぬことにあり、職人さんが、「このボルトで大丈夫。むしろ、最初に持ち込んだものよりいいやつだよ」と言っても、それではダメ・・・。しょうがないので、データを揃えて、それを英訳し、エンジニアに承認してもらい、初めてボルトが届くのよね・・・。ボルトがなければ骨組みも作れず、工事は4・5日遅れる、と・・・。

そして、雨でも遅れるわけです。コンクリートを流し込んだあとは、湿気が大敵なので、工事が進みません。職人さんたちも合羽を着てでもできるところはやりますが、天候に左右されるのは仕方ない。しかも、滑走路脇なので、風もけっこうあるんだよなぁ。雨と風が両方だと本当にたいへんです。

私は、建築業界の通訳をしたのは初めてなので、毎日かなり楽しんでいます。それもこれも、アメリカからやってきた、Air Forceに消防トレーニング施設を売っている業者さんのアメリカ人がいるため。38歳のWisconsinに住んでいる人なのですが、もともとはTennessee出身。少し禿げ始めていることも見せてくれて(笑)、1日5時間ほどいっしょにいるのですが、まったく苦痛ではありません。むしろ、楽しい。やはり、知らない人を知るプロセスというのは楽しいのである。

まずは、彼の情熱。なぜ、消防トレーニング施設を売ることに誇りを持てるのか?それを米軍の基地(全米あちこちですでに32個。トルコや沖縄や三沢など、世界規模でも数個)に建てています。消防士はすごい職業だ、というのは、彼と私の共通の価値観で、そこですでに盛り上がってしまい、そのあとは、かなりスムーズに話が展開していくことになりました。

『You Go, We Go』『消防団員の高齢化』などに書きましたが、私は消防士という仕事を、ものすごいと評価しているのです。まとめてみると、自分の生命と他人の生命をいつも秤にかけて、迷うことなく他人のものを優先できるすごさ。もちろん、むざむざ死を選ぶという意味ではないですよ。どんな生命も大切だということをしっかりわかっており、自分のものと同等に扱えることをすごいと思うのです。その昇華した形が、職業時における殉死です。

知り合いに消防士さんがいれば知ってらっしゃると思うのですが、彼らはその「もしも」のために日々、トレーニングをします。今回の消防トレーニング用の建物は、いちいち家を燃やしていたらたいへんコストがかかるので、何度も使えるものを設置するというプロジェクトです。1000回に耐えうることは証明済みで、どんなに練習を重ねても5年ほどは保つことが計算されています。基地内に作るのですが、近所の日本の消防士さんのトレーニングにも使われることになっています。4階建ての建物で、狭い隙間の設定や、階段、外階段、エレベーター、居間やトイレなどの消防トレーニングなど、細かいところにも配慮されており、漏れがなるべくない設計になっています。

そんなトレーニングにより、消防士さんたちは生命を救うことになるわけで、建築現場で働いてきたアメリカ人にとっては、それに携わることができることは、誇りなわけです。私は、ただの通訳ですが、しかも、ボルトの強度の訳にも苦労しているわけですが(笑)、意気投合でした。

彼の生い立ちは、私が山本周五郎を読んだあとに書いたエッセイのように、厳しいもので、1年間ほど、孤児院に預けられていたこともあるといいます。よくある話の離婚、異母兄弟の死、転々と変わった仕事やその他、すでにかなりの話を聞きました。宗教は信じないこと。好き嫌い。小さい頃からのアレルギーや怪我歴。学校での出来事や、ガールフレンド(結婚はしておらず、同居して8年になる恋人がいます)と彼女の職業について。家について(4000ドル=50万ほどで、1エーカーもある土地と1922年に建った家屋を購入したそうです。手入れをして、職業柄安くあがり、4ヵ月後には査定で400万の価値がついたそうです)。お母様の料理。政治観。

いろいろなことをすでにずいぶんと話したような気がしています。カケラかけらを繋ぎ合わせることができる、私の性質のせいなのか、質問形式で話を進めるせいなのか、彼がおしゃべりなせいなのか(笑)、話は泉のように湧いてきます。

彼の帰国は、3月17日と決まっているので、16日までが仕事。私は、それと同時にこの仕事は終了しようと思っています。頼まれても、もう本業のほうがレールに乗りそうなので、時間を食うバイトは受けられないようです。力試しという意味で、通訳・翻訳業務の派遣ばかりをやっている会社に登録してみようかな、とも思ったのですが、やはり今はタイミングが悪いです。

あと、3週間、彼が楽しく仕事ができるよう、消防士さんたちのためにトレーニング用ビルが早く建つよう、がんばって仕事をこなしたいと思います。その前にまた風邪でも引いたらたいへんだし、本業がおろそかになってはいけません。西さんの帰国は3月2日に決まったので、これがアップされる頃にはもう戻っていて、仕事はこなしてくれていると思います。今もオンラインでできることはやってもらっているんですけどね。

通訳というのはかなりいい仕事で、自分が見たこともないような世界も垣間見られるというオトクで楽しい仕事です。チャンスがあったら、どんどん引き受けたいところなのですが、やはり本業が安定してからだな・・・。がんばろう♪

彼が飼っている犬3匹とネコ1匹とトカゲのようなBeard Dragonのつがいの写真がかわいいのよぉ。もうすでに焼き増ししてちゃっかりもらってしまいました(笑)。