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お弁当を作る男たち

2001年に書いた文章です。

 

西さんがお弁当を持っていくようになってそろそろ6年になろうとしています。それももうあと数週間で終わりですが、新しい赴任先に行ったらどうするのかなぁ。お弁当箱も荷物に入れたほうがいいんだろうか?彼なりに気に入っているお弁当箱なんかないような気がします…←本当に頓着のない人。

最初のうちはまだ学校に行っていなかった私がわざわざ朝早く起きて作っていたのですが、いつしか潮が引くように自立していきました。これをだんな教育とか呼ぶ人もいるのでしょうが、私はそうは思っていません。「刺激→反応」とか、自分の学習であると思っています。

まず西さんという人は、経済観念がごくごく薄い人です。ランチにお金をかけて楽しくおいしいものを食べて、価値あるものにお金を払っているかどうかに頓着がありません。メニューを見るときに値段を検討しているところを見るのは、ワインリストくらいだな(爆)。まぁ、元々目玉がひっくり返るほどの高価なものを欲しがるわけではないのですが、「質素・節約」とも遠いところに位置しています。おかしいのは、そのわりにお洋服だけは長持ちするんだよねぇ。セーターなんかは23年も持ってるのがあるし、スーツも入社したとき(18年前)と体型は変わっていません。そのときより確実に貧乏ではないのですが、路線的に時代に取り残されているかもしれない>経済観念。

お弁当がいい!と歓んでいた理由には、オフィスから出てわざわざ車に乗ってさみしく空いたおなかを充たさないで済むことでした。時間の節約ができる、という単純な理由です。「何が食べたい」というはっきりした目的がなく、仕事に埋もれてしまっているので「この人ってやっぱりゆとりなく仕事してるのね…」と思ってきました。それをよその人たちは「西さんは仕事ができる」だの、「飯より仕事が大事だなんて、それくらいやらないといけないくらい厳しいもんなのね」なんて、好意的に解釈していましたが、私はなぜか「心の貧しいゆとりのない人」と思っていました(爆)。ん、今でも思ってますよ。仕事の時間とゆっくり休憩する時間のメリハリのない人はいけません。西さんの課題です(きっぱり)。

6年前の最初のうちは、どのくらい仕事がたいへんなのか私にはNo Ideaだったのですね。なので、お弁当箱をオフィスに忘れて帰ってくるようなことがあっても、私はただただ忍耐してデータを取っていました。3回に1回くらいの割合で、「ねぇ、お弁当箱をどうしてオフィスに忘れちゃうの?汚いよ。腐っちゃわないか?」と言っていました。少しずつ生活全般のリズムを把握してから、小言は増えていきました。だってねぇ、週末にお弁当箱まとめて2・3個持って来る人って…(汗)。

朝もすごくあわただしかったのです。西さんのオフィスは個室になっていたので、「愛妻弁当自慢競争」などというものもなく、アタマをひねったおかずを作る必要もなく、ディスプレイを豪華にするなんてことは夢にも思わず、残り物をバンバン入れて冷凍食品(野菜とかねぇ)を活用していたのですが、営業で前日接待があると出社する時間がまちまちだったりする…。しかも日本他から出張者が来ているとランチもつきあいがあるので要らなかったりする…。たった一言が足りないために、私への西さんの小言は増えました(爆)。

私も4年半前からはお弁当を週に2・3回持っていくことになり、「ついでだと経済的」という観念があったので、ついついお弁当は我が家での生活の一部の大きさが格上げになっていたのですね。日本に帰国するたびにお弁当用品は増えていったのです。楽しいよねぇ、何かしゃかりきになっていてランチの時間になって、ふたを開けると食べるものがそこにあるって♪私はキャンパスの芝生の上や、カフェテリアや、車のなかでそのお弁当を楽しみました。メリハリは大切だと思うやつなので、授業を受けたクラスルームにそのまま残って机の上でお弁当を食べるだなんてこと、とてもわびしいと思っていたのです。

私がお弁当を必要でない日であっても、朝は早く起きてお弁当を作ることに、西さんはどうしても抵抗があったようです。小言の原因はフェアでない労働にあるんじゃないか?と(爆)(爆)。

私の小言を回避するために西さんが考えたのは、「時間がまちまちでもいいようにすること」。おかずだけ作ってごはんだけ炊いておけば、あとは自分で詰めていくよ♪ってやつでした。もちろんそれは私にお弁当が必要な日でもそうでなくてもです。でも何て言うんでしょうねぇ。西さんによりたくさんおかずをあげたいとか思うのって。余計なお世話なんだろうけどねぇ。豚肉の生姜焼きがそこにあっても、ちまちました小さいカケラを自分で拾ってから、西さんには大きな豚肉ぅ!ってモノを残してしまうわけです。これって何から来てるんでしょうね。まだ心配なわけですよ。ふりかけやお新香は入れたかな、とか?(爆)たまにはごはんは海苔重ねお弁当にしてるかな?とかね(爆)(爆)。ああ、そこにちょっとだけごまを振れば自分でお弁当のふたをあけたときにうれしいよ♪とかねぇ…(汗)。

そのあとには、私がお弁当が要らない日は自分で作ると言い張り始めたわけです。そりゃ見ていて哀しいお弁当でしたよ。卵と冷凍野菜だけとか?どうして3回も卵料理続けるのよぉ、とか?でもそこをぐっと堪えて、私は西さんがいいようにって黙って見てきました。たまには「ん?どうしてこれを使うの?こうしてみたら?」なんて覗き見してたんですけどねぇ。でも不思議だよねぇ。どんどん進歩する。日本に帰って買って来てみた、電子レンジ卵調理器とか、新しいお弁当箱とか箸やフォークも活用してるし、インスタントのスープやまとめ買いしたお新香も海苔もちゃーんと入れてる。心配して損したのは私だけかい?と思わせるような進化ぶりでっせ♪「やるじゃん、西!」って感じです。私がたまに手伝おうとしても手をぴしっと掃われたこともあり(爆)、彼なりの世界が出来上がってきてるという感じでした。けれども、私が作ったものでもちゃーんと残さず「おいしかったよぉ!」と言って帰ってくる。

自分で作る確率が高くなってからは、お弁当箱もオフィスに忘れてこなくなったわけです。帰ってきてから「ごはんつぶは漬け置きしておかないと取れないのよ。ちゃんと出してね」なんて言わなくてもいいようになっていたのでした。ついでに、りんごやバナナがないと「買っておいてね」と言うように頓着の一端を見せるようになったのです。

そして1年前、私が事故で怪我をしてお弁当から無用になってから、彼はうれしそうに毎朝お弁当を作っていくのです。朝の時間の使い方もゆったりになって、家に「眠るためだけに帰ってくる」という雰囲気を醸し出さなくなりました。もちろん私が怪我をして生活一般が不自由になったせいもあることでしょう。特にトイレも行けないくらいにたいへんだったときには、本当にくるくるとこまねずみのように働いてくれましたしね♪

そして具合が既に悪かったときに来た留学生Oくんも、やはりいそいそとお弁当を作って行くのです。彼には西さんよりも切実な理由があります。外でランチを買うのは高い、という理由。でも起きられなくて作れないときには、「うわぁ!失敗したぁ!」という顔だけして、コーヒーだけを水筒に詰めて持っていきます←今朝もそうだった(爆)。時間の配分がテストがあろうともだんだんうまくなってきているのがわかります。

まだまだ足腰の不自由さを感じている私は、お弁当を作る男たちを見て、「いやぁ、学習って大切じゃーん♪」などとほくそえんでいるわけです。私が何をしたわけでもなく、無理矢理教育を施したわけでもなく、癖をつけてあげたわけでもなく、彼らはみずからきちんと望んでお弁当を作るようになり、その過程においても、自分によりよく♪をモットーに、「どうせやるなら楽しく」という気持ちが伝わってきます。

たまに「ねね、西さん貸して♪」と請われるのですが、ほんとにねぇ、クローンがいたら派遣したいですわ☆いろいろやりますぜ(爆)。

私が目下不安なのは、健康体に戻ったときに彼らほどしっかりお弁当に対しての情熱があるかどうかということ(爆)。貧乏生活に戻るんだから、しっかりお弁当を毎日持っていかないとねぇ。勘は戻るでしょうか?生活のメリハリはつけられるでしょうか?うーん、わからん(爆)。これだから人生っておもしろいよねぇ♪

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