物忘れ

11/07/2007 にアップした文章です。

 

私には物忘れをしたということがあまりなく、「記憶力だけで生きているようなもんだから」というのが口癖になっています。出てこないものは、どこに整理しておいたのかわからないだけで、頭の中のどこかに入っていることはわかっています。ところが、私がDNAを半分もらった母は、ものすごい度合いの物忘れ大王で、歳のせいではなく、30代からなのですよ。不思議だ・・・。彼女は真剣に物忘れをしていると思い込んでいるのですが、実際は記憶というメカニズムをわかっていないだけで、認知症などの心配はまだしなくていいようです。今日は、物忘れについて。

物忘れ:しばしば物事を忘れること。
記憶:(1)経験した物事を心の中にとどめ、忘れずに覚えていること。また、覚えている事柄。(2)〔心〕 経験したことを覚えこんで保持しておき、のちに過去の経験として再生する働き、また、その内容。

まず始めに考えなければならないことは、「本当に記憶に刻まれているのかどうか?」ということ。忘れてしまったのではなく、実際はインプットされていないことというのは多いものです。記憶に留まるためのメカニズムというのがあり、その手順を踏んでいなければ、思い出すも何もないわけです。

視覚と聴覚に障害を持たぬヒトであれば、覚醒しているあいだに無数の情報が、意志とは関係なく、半強制的に入ってきます。そこで、ヒトは選択をしているわけです。意識的なものと無意識的なものがあります。視覚や聴覚の受容範囲があり、基準が決められ、それを超えるものは印象に残り易く、記憶に留まり易くなります。ただし、異常な状態で記憶したものは、偏りも起き易く、事実を事実として記憶しているかどうかも疑問が残ります。事件の当事者の証言が曖昧になりやすいのはこのためです。ここで、意識をしているかどうか?という分かれ目が問題になり、無意識のうちの記憶は信頼性が低くなります。莫大な量の音や景色やヒトの顔など、いちいち憶えているわけもなく、その必要性もないため、「本当に刻まれているか?」を問いただす必要が出ます。

私の母の場合はこれですよ・・・。TVをガラスの眼で見ており、記憶する意図がないのに、「忘れてしまった」とのたまう・・・。ありえない(爆)。気がないから憶えていないのです。見ているもの、聞いているものを憶えようという気がない状態の場合、引き出す記憶はそこにないわけです。ここがわかっていないんだなぁ、彼女・・・。しかも、彼女は家事をいろいろとしながら、立ったり座ったりしつつ見ているので、もしも「憶えたい」と思ったとしても、記憶するためのたくさんの障害物があります。

記憶は昨今、諸説があり、わかりにくくなっているのですが、2つに分かれています。
short term memoryとlong term memory
short term memoryは、学者によってprimary, active, working memoryなどとも呼ばれますが、説によって名称が違うだけで、導入部分であることには変わりはありません。許容能力は、ヒトによって差がありますが、脳が正常に機能していれば、±7桁の数字や3から9つの言葉が憶えられます。脳の部位としては、脳の前部分、前頭葉であることはわかっています。記憶できる時間は、20秒から30秒ほどとされており、意識をして次のステップへと記憶の階層を深めていかねば失われます。ヒトによっては1分ほど記憶できる場合もあります。

Long term memoryには段階があり、ここで、中期記憶とする学者もいます。学習と記憶を繋げる場合には、この中期記憶と長期記憶を別個にしておくと便利ではあります。が、どのようなプロセスを辿るかにより使われる脳の部位が違い、結果、記憶の差が出ます。

Explicit memory (declarative memory) 意識をすれば言葉などで取り戻せるもの。言語性記憶とも呼ばれます。
これらの中には、2種類あり、
Episodic memoryは生活の中で過去にあったこと。
Semantic memoryは資料や物や人の名前などやその意味について。
Implicit memory (non-declarative memory) 器具や身体を使って記憶を取り戻せるもの。非言語性記憶とも呼ばれます。
Procedural memoryは、物事の手順や運動のコツなどです。自転車に乗る・泳ぐ・計算をする・タイプをするなどがこれに当たります。

と、これだけ説明してもあんまり実感は湧かないだろうなぁ・・・と思いつつ。

私の場合は、憶える気もないのに憶えていてしまうのですが、それは取り込み方の問題です。この分野は、学習という経済的利益をもたらす大きな市場があるので、力を入れて日夜行われているのですが、最も定着しないのは、Semantic memoryという意味記憶です。要するに、その個人にとって、その物事は意義・意味があるかないか?で、記憶できるかどうかに大きな差が出るわけです。そこでも取捨選択をしており、優先順位をつけたり、関連性を持たせたり、いろいろなことが学習の方法として提案されています。どれが本人にとっていいのかは、個人差がありますが、まずはその情報が自分に意義・意味があるのかどうかを見極めるのがいいでしょう。その重要性によって、記憶はされますから。

おかしいのは、睡眠記憶なのですが、寝ているあいだに記憶するというのはちとおかしい。睡眠の役割の中には、「他の情報を入れない」「記憶の整理をする」という2つが混ざっており、その2つが記憶に役立つがゆえに、睡眠しているあいだに学習できているという錯覚を引き起こさせているだけで、あんまり褒められる商法ではないです。ヒトの脳は、睡眠中に刺激全般・記憶に留まる情報を退けることで、休息モードに入ります。さらに、朝・昼・晩までに受けた刺激全般と記憶を脳が処理していきます。ファイルに取り込み、コンピューターで言われる最適化をするわけなのです。なので、睡眠時間が足りない人は、覚醒時間の能率が上がらなかったりするわけですね。これがその日の分、行われなくなってしまうからです。ですから、私は睡眠の大切さをしつこく書くわけですな・・・。

この整理ができない状態で、次々と情報を入れても、記憶には留まりません。ごはんをしっかり食べたり、リラックスしたり、眠ったりするのは、本当に大切なんですよぅ。

母は物忘れをしているのではなく、こうした悪循環を若い頃から続けてきただけなのです。もしやすると、老化して脳のキャパが下がることはあるかもしれません。が、まだまだ先でしょう。私も飲酒を過ぎなければこの脳はずっと健在な時間が長いまま生きていけると思うのですが、どうでしょうか・・・。

記憶力がいい人というのは、実際は雑多多種な情報を、自分に関連性のあるように整理整頓できている状態が続いているだけです。それほど個人によってキャパの違いはありませんので(ささやかだけれどもこのへんが重要な違いになるのかもしれない・・・。が、私はたいていの人が自分の欲するほどの記憶くらいはできると思っています。脳に障害がない限り、日ごろの生活を振り返ればしっかりと改善できる)、チェックしてみるといいかもしれません。物忘れを老化のせいにするのは、最終段階です。まだまだできることがたくさんありますので、振り返ってみてください。

 

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