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Crashの感想

2006-04-08

アカデミー賞が終わってまだ1ヶ月。しかし、すでにケーブルの映画チャンネルで、見れてしまったのでした。結論から;いい映画でしたが、どうして最優秀作品賞なのか?という疑問は拭えないまま・・・。

ハリウッドの役割の大きなひとつの中に、George Clooneyがスピーチで言及したように、「人々に社会問題に目を向けてもらい、意識を高くしていく」ことがあるとするならば、Crashが素材にした、人種問題は、もう10~20年古いと思われたのです。本当に人々は、人種問題についてまだまだコレほどこだわっているのか?答えはYesですが、ハリウッドの先駆者としての使命は、物事を凡化することではなく、どんどん人々の心の中にメスを入れていく素材を扱う、ということを私は「すごい!」と長年思ってきたのです。しかも、多様化してきた、考え抜かれてきた人種問題を、こんな形で描いているのか、と少し落胆もしました。いやいや、本当にいい映画ではあるんですよ。が、No.1の冠に値するとは、やはり思えないまま、タイトルバックをぼーっと眺めてしまったのでした。

私もアジア人で、一体ナニジンなのかあまりわかっていただけない風体です。私が人種差別を明らかに受けたように感じたことはなく、そんな場所に出入りしないがゆえに、の防御のせいなのかもしれません。たくさんの登場人物が、LA近辺で暮らしていく中、それぞれの人生がCollide(衝突する、クラッシュする)風景を描いたものなのですが、あまりに出会いが偶然すぎて信じがたいものがあり、私には非現実的に思えました。少なくとも、もしもあんな事故的偶然が頻繁に起きるのであれば、登場人物みんなに「ねね、宝くじ買っておきなよ、あなたなら当たるから」と耳打ちして回りたいくらいです←数学的矛盾はありますが(笑)。

しかも、アメリカではなく、LA近辺ではなく、世界にあちこち散らばっている人々が、コレを見たときに、この映画を鵜呑みにしてしまった場合のことを考えると、私は悲観的にすらなりましたよね・・・。「うーん、ありかもな」という場面はいくつもあったのですが、私はやはりこの全体的プロットやありえないだろう偶然には、あまり振り回されたくないと思ったのでした。

しかも、人種や文化が混濁としたエリアに住んでいる人間として、私は人種問題にここまで振り回されて生きていきたくないよ、と。

これから留学しようとする若い人たちが、この映画を見て思うことは、「怖い現実」ではないのでしょうか。アメリカにはいつまで経っても自分は受け容れてはもらえないのだな、という諦めもあるかもしれません。私は、やはりもっと希望的なのです。ナニジンであろうとも、どこの国に生まれてどこで育とうとも、順応する度合いとIdentity(自己存在証明)がしっかりしていれば、誰でも必ず生き延びて、人生を楽しくしていけると信じているからです。それを可能にしている土壌が、こんな歴史を持っているアメリカであり、その発祥や歴史、成り立ちにケチをつけているように思えてなりませんでした。

アメリカの広大さや多様性をあまり理解できない外側にいる人間には、LAやNYのような場所は、東京や大阪と同じように、国の顔や玄関口と扱うようなところがあり、ハリウッドが自ら自己警鐘をしているにしても、現実の一部だけを描いていて、片手落ちすぎると思えたのです。まったく人種差別に喘いでいない人はゼロなのか?少なくとも、私は「つらいスケール」では、ほぼゼロに近いですもん・・・。特に不愉快だったことは、私の国籍や人種よりは、女性であることのほうが多かったと思います。しかし、それらも大して大きな問題ではなく、私は自分のことをフェミニストとは呼べないでいます。

さらに、アメリカの内側にいる人間で、自分の田舎な故郷から出たことのない人々にとっては、LAはひどい場所のような印象を与えますし、ひどい人々の集まりのようなイメージをもたらします。ゆったりと時間が流れる近所づきあいがしっかりあるところに住んでいる人々にとっては、他人の顔に向かって人種差別をすることそのものが理解できないことでしょう。あるいは、白人だけの町に黒人が来たときの準備になるのでしょうか?いろいろな人種や文化が織り交ざっている地域が多くなりましたから、たとえLAのような大都会ではなくとも、人種差別問題は、個人のそれぞれのレベルで経験していると思うわけです。なのに、LAがコレほどひどいのだ、とアピールすることを、なぜかアカデミー会員が認めてしまっている・・・。

やはりそこには希望がありません。あれほど、徹底的にエンターテイメントに徹してくれるはずのハリウッドが、ここまでエンターテイメントをしないのは、かなり違和感のあるものでした。ヨーロッパ映画は、製作者側のマスターベーション的な主観が主流であるものが多いですが、ハリウッド映画は、万民が拍手して楽しめる映画を作ることに長けてきたわけです。そうでない社会問題モノなどは、DocumentaryやIndependent(独立系)の映画会社がやってきており、役割分担がきちんとあったはずでした。それが壊されてしまった感じ・・・。

ここも残念なところです。

Brokeback Mountainのオリジナル短編小説を書いた女性が、イギリスの新聞に書いていたことですが、CrushのDVDが審査員の家に、投票1週間前に配られたことについては、なぜ規制がないのか?彼女は、こんなやわらかい言い方はしておらず、卑怯なやり口だ、とおおっぴらに言っていましたが・・・。

が、Brokeback Mountainのほうも、予算の少ない映画、Independentに近いもの、として、Randy Quaidにとても少ない出演料しか払っていなかったとして、LAで訴訟を起されました。

私個人としては、アカデミー賞作品賞にふさわしかっただろう、と思えるのは、Brokeback Mountainのほうですが、ある意味、まだ早すぎたのかもしれません。ゲイコミュニティを1st Class citizens(第一階級市民)に上げることは、まだアメリカ全体ができないでおり、時期尚早だったのかもしれないです。

しかも、レースだしな・・・・。私は競争の意味を理解しようとしていますが、実際、ただの第三者であり、こうして感想を述べまくることも、ただの言論の自由を使っているだけで、と特に大した意義があることとは思えないでいます。が、映画を日々見ているやつとしては、こんな感想だったのだ、ということを書いてみました。

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