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この世に神はいないのか

2006-03-09 に書いた文章です。

 

と嘆き悲しんだ人が世界中に溢れているのではないかと、今日は思った次第です。私もそのひとりです。神を疑問視することなどしてはいけない、と育てられたわけではないので、かなり自由に嘆き悲しみました。

そのきっかけは、Supermanを演じたChristopher Reeveの妻、女優であり歌手でもあったDana Reeveが亡くなったことです。昨年8月、肺がんに罹ったことを発表したことを、私は台湾で知り、パートナーと話した記憶があります。私はそのとき、「喫煙者でもないのだし、きっと治ってくれるよ」と自分を鼓舞したのですが、たった半年ちょっとで訃報を読む羽目になるとは思いませんでした。44歳でした。

記憶は定かではないのですが、彼女は、All my Childrenという恐ろしいことに30年近く続いている昼メロにも出演しているところを見たことがあります。その他、TVのスポット出演やBroadwayなど、NYを基盤として、歌手と女優活動をしているときに、Christopher Reeveと知り合います。彼女がそれほど有名ではなかったことは確かです。

夫Christopher Reeveは輝かしすぎる人生を送りました。父親が教授で、母親がジャーナリストだったためなのか・・・。ジュリアードへ入学し、クラスメイトだったRobin Williams(ちなみに彼は、この近所のCommunity college;2年制大学を卒業後、ジュリアードに入学)と共に見出されます。1977年にモデルと恋愛をし、結婚しないままふたりの子どもができますが、10年後、友好を保ったまま別れます。その後、1992年にDanaと結婚をしているので、婚姻制度そのものに対しての懐疑があったのではなく、モデルだった彼女の意志が反映されていたのかな?と思いますが、定かではありません。Christopher Reeveはさらに、ジュリアードのあと、Cornell Universityにも入学し、卒業しています。あくまで、NYベースだったのですが、映画の仕事の折には、西海岸にも長い期間住むことになりました。Danaとのあいだにできた子どもには、Willと名づけました。日本語では、意志という意味で、Shakespeareのファーストネームでもあります。Christopher Reeveは52歳で亡くなりました。健康だった彼は、乗馬競技中の落馬で、全身不随になり、医師団は尊厳死を薦めたのですが、Danaの意志により、診療を続け、亡くなる寸前まで、世界的に知名度を得た財団を介して、Stem cell(幹細胞;胎児のみが持つ発育前の細胞で、発育に伴いどんな細胞にもなることが鍵。これを取り出し、手を加えることにより、奇病・難病治療への大きな一歩となる)の研究を促してきました。呼吸補助機器を使わずともよくなり、手が使えるようになり、足の指が動くようになり、報道があるたびに、私も胸を躍らされた記憶が甦ります。死ぬはずだった彼が、どんどん健康になっていく。私は、彼がいつか歩けるようになるのではないか?とさえ夢を抱いていました。なんたって、Supermanだったんですから・・・。途中、監督業をしたり、ヒチコックの『裏窓』のTV映画にも主演しました。1995年の事故から、9年、彼は「決してギブアップしない人間」のお手本でした。

そして、その夫を持ったDanaもまた、ギブアップしない人間だったはずなのです。昨年の11月には、ベネフィットのパーティーで歌も歌ったそうです。そのときは、「放射線治療がうまく行っているようだわ」と友人たちに話しており、私はその記事を読んでほっとしていたのです。彼女が肺がんになったときも、夫の親友であり、家族全部との親友になったRobin Williamsが、Danaの代理として、記者会見を開き、彼女のための説明をしたほどで、明るいRobin WilliamsがReeve家に光をもたらしたことは確実です。とにかく、彼女に直接マスコミ攻撃が当たらぬよう、彼女を隠してから、Robin Williamsが記者会見をするという、時差攻撃でした。その発表後も、Washington D.C.での医療学会の予算委員会やらその他には出席しているというニュースは、悲しいかな、少しは出ていました。

彼を支えた9年間、その後、彼を失った2年間、彼女はどんな気持ちで生きてきたのでしょうか?

私は以前こんなふうに思っていました。「この試練を与えられているのは、私がこの試練を超えられる人間だとみなされているからだ」と。が、今は曖昧です。「超える」という定義がはっきりしていません。Danaは死んでしまったとしても、与えられた試練はすべて超えたのかもしれません。死後の世界や輪廻転生などは、証明のしようがないので、言及しても詮無いことです。

が、もしも神がいるならば、できることならば、Danaは生かしておいてほしかったです。わずか13歳の息子のためにも。Superman時代に稼いだお金は、ほぼすべて保険適応外の診療に費やされてきました。寄付もしましたし、無料での(持ち出しが多い)ボランティア活動でも仕事を得るチャンスがないまま、Danaは生きてきたのだと思います。祖父母がいるにしろ、義理の兄姉がいるにしろ、Willはこの先どうやって誰と生きていくのでしょうか?マスコミの発表は、これには触れられていませんでしたし、今後も追いかけることはないのでしょう。ましてや、Christopher Reeve財団を、誰がどうやって続けていくのか、それも疑問です。Willには重荷すぎることでしょう。まだ13歳です。

今日は、私が商売のことで右往左往していることなど、この宇宙と世界の大きな流れや、その中で繰り広げられているさまざまな中でも、ごくごく小さい、屁でもないことなのだと、心から実感しています。舌の根も乾かないうちに、また不平を言うようならば、パートナーに叱咤してもらわねばなりません。タバコを吸わなかったDanaが肺がんになり、半年ちょっとで亡くなったことと、タバコを吸い続けている私はいまだ健康で生きている、という一点だけを比較したとしても、私は大いに謙虚になり、神に感謝すべきなのでしょう。

が、それでも、この世に神はいないのか?と思ってしまう弱さを許してはほしいです。

私は「世の中は捨てたもんじゃない」と思いたいがために、先週のAcademy Awardのスピーチや、日々清廉潔白にしっかりと生きている人々を支えにしています。歴史の本や教科書にも頼り、映画やニュースにも頼るのです。もちろん、この世の汚さや陥れられる誘惑や悪の存在は否定しません。が、ゆえに、さらに支えが必要なのです。Danaが亡くなったことは、私にはショッキングでした。支えがひとつ減ったわけです。

おまけに先週は、Andy Griffith ShowのBarney役を演じていたDon Knottsが亡くなりました。日本で言うと何だろう?TVが白黒だった時代に、何年もお茶の間に笑いを提供してきた番組です。監督のRon Howardも子役で出ており、ひたすら労働するしかなかった戦後の下層・中層階級の人々に、田舎町の素朴さを提供してきたのです。81歳でしたから、しょうがないと思えたにしろ、ずっと現役でやってきて、次の登場を待っていたがゆえに、とても悲しかったです。私はRe-run(再放送)でも充分笑えましたから、当時の人々はもっと慰められ、もっと楽しく見ていたことでしょう。

ちょっとふさいだ気持ちになりましたが、私は自分のできることを今日もやらねば、と思った次第です。ふぅ・・・。

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尚、現在 Will Reeveは24歳。去年の秋、インタビューに答えています。ものすごぉく立派な大人に成人しています。Will Reeve Interview

 

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