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クリスマスに寄せて

Dec 25, 2005 に書いた文章です

 

神道の我が家にはなぜクリスマスがやってこないのか?というのを両親に詰問したところ、一度だけ、ディズニーのバンビのトランプをプレゼントしてもらったことがあるのです。そのトランプは20年ほど保ちましたが、その後、母に預けたので今どうなっているかは知りません。が、レイアウトや色などもすべて鮮明に憶えており、廃版ではありましょうが、もしも遭遇することがあったらイッパツでわかります。

貧しかったせいか、ただ「ふだんよりちょろっといい食べ物がでる」程度の認識しかないクリスマスイブでしたが、それでも家族が揃ったときにはとても楽しいものでした。

高校生になりアルバイト三昧の日々が始まってから、私は両親どちらか、あるいは両方とクリスマスを過ごしたことがありません。稼ぎ時だったからです。16歳から24歳まで、私はクリスマスイブ・クリスマス・年末年始・元旦はいつも働いていました。特に淋しい青春だったとは思っていません。ご祝儀が出たり、時給が1.5倍になるほうが、私にはよかったのです。足並みを揃えながら遊ばないとつまらない、とも思っていませんでしたし、私は一人遊びが充分できました。理解者を探す術にも長けていましたし、大勢の中で淋しかった分、自分の裡側とささやかな集まりではとても楽しい想いを繰り返してきました。

父がメーデーで春闘の旗を掲げながら反骨を見せてくれていたせいか、私は少数派でいることがいつも不安ではありませんでした。クリスマスが我が家に来ないことも、イベントや行事にはいつも働いていたことも、特につらかっただの淋しかっただのと感じたことはありません。自分が他人とは違い、扱いが悪いという外側からの圧迫にはつらく想ったことは多々ありますが、自分の小さな世界の中ではいつも倖せだったのです。過干渉してくる人々がいない限りは、私のところにはクリスマスなど来なくてもよかったです。

日曜学校に通っていたせいか、キリストの生誕を祝う人々への敬意はあります。観光地などに行けば、必ず教会にも足を踏み入れて、日曜日ならばついでにミサにも参列します。不思議なことに、あの頃習ったラテン語の賛美歌や祈りはしっかり憶えており、英語での祈りもさらさらと頭と心に入ってきます。ヴァレンタインと同じで、商業化されたトレンドに乗ることは、10代の頃からずっと拒否してきました。誰かがプレゼントをくれるから、あらかじめ用意しようという気持ちもなく、ボーイフレンドがいたときも、モノよりはどこかに小さな旅に出かけることを所望していました。

日本では、恋人と過ごさなければ淋しい、というトレンドはいつからできたのでしょうか?そもそものクリスマスの意味を履き違えさせられたまま、キリストの生誕を祝うこともなく、歴史も意味も知らず、人々はホテル業界やプレゼントの小売業者をホクホクさせています。USでは、あくまで家族がクリスマスの核になっており、恋人だけを大切にし、家族を見捨てるようなスケジュールの立て方は不和を招きます。宗教の違いだとは簡単には言えないでしょう。USは移民で構成されている国ですから、カトリックが中心ではありません。それでも、イベントを、家族の絆を深めるために利用するのはとてもステキなことだと思います。

周囲が「これがフツーだ」と押し付けてくるものに、「そうかもしれない」→「そうだよね」→「そうだよ!」とさせられてしまうのはやはり悲しいことです。私にも、お店が終わったあとにクリスマスだから、という理由で食事に行ったり旅行したりと楽しい想い出を作った記憶はありますが、他人がみなやっているから揃えたという動機はカケラもありません。むしろ、誰もいないシーズンオフに露天風呂を貸切にできたほうが楽しいんじゃないのか?などと思ったりします。私はとても現実的なのです(笑)。

たまーにネットの掲示板や、トレンド雑誌などで「クリスマスまでに恋人を作る!」などというのがありますが、アレ、どういうつもりなんでしょね?恋はクリスマス用なのかい・・・。もうその言葉に乗っている状態がすでに、恋愛に真摯な姿ではなく、続けられるはずの恋も続く確率がどーんと減ります。人生をドラマ化したい気持ちはわかりますが、ドラマは編集されてるからステキに見えるだけで、現実はあんなふうには行かない、と頭でわかっていても、求めてしまうのはなぜなんでしょ?

私は今晩、20年来の親友とクリスマス前を過ごします。彼女はハワイにいったん帰り、忘れ物を取って来たり、支払いやその他を済ませてくる予定になっています。11月の初旬から来ていたので、生活の身の回り品やオリジナル品(CD-ROMなど)が足りないのと、人に頼んできたものの、持ち家をしっかり管理してきたいのだということです。なので、晩餐は今晩になりました。が、どちらにしてもクリスチャンではないので、彼女のリクエストの筑前煮を作り、他に数品出して、シャンペンは飲むものの、楽しい食事になるだけでしょう。かわいそうなのは、彼女のネコももちゃんです。わずかな往復にも彼女は連れていかれてしまうのです。ママのほうが彼女と離れていられないから仕方ないです・・・。が、ハワイは国内なので、カーゴではなく座席に連れていけるエアラインを探したようです。

このあたりは、ホワイトクリスマスは30年に一度くらいしかありません。カリフォルニアももっと山のほうに行けば可能なのですが、ここはダメです。今年もお決まりの映画、What a beautiful life!やThe Miracle of 34th StreetがTVに流れます。最近は、Home Aloneも定番です。他にもクリスマス題材の映画は後を絶たず、クリスマスは家族のため、というテーマで溢れています。

それでも、日本は、独自の文化輸入の変遷をまだ続けていくのかな?と考えながら、私はクリスマスを過ごすことになりそうです。

イブとクリスマス当日は、私はひとり+ネコ6匹と過ごしますが、それに関して淋しいとはやはり思えないでいます。思え、と他人に言われてもやはり思えません。何人かの人たちがパーティーに招いてくれていますが、飲酒運転をしたくないので、断り続けています。年末年始も親友と過ごす以外は、パーティーには出ないで、出不精なままで仕事をしていると思います。コレが私の目下の最優先事項なのが現実です。他人が休んでいるときに働いているのは、アリとキリギリスみたいでいいではないですか♪うーん、私は何でも楽観的に解釈する傾向あり?(笑)

ひとりで過ごすクリスマスやお正月を他人に「さみしいね」と言われても、どうぞ傷つかないでください。いっしょに過ごす人がいる人たちは彼らに感謝してください。が、イベントがなければ、自分の心や自分の住んでいる世界やその文化を実感できないというのは、それこそ淋しくて悲しいことです。

とは言え、私は今晩、上等なスコッチを開けることにしています(爆)。

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