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自分が自分であることを忘れる瞬間

1999年に書いた文章です。

 

私はこれを意識的になんとなく追い求めています。とっても混乱してしまうので、どこか深い穴に引きずり込まれそうになってこのまま戻ってこれなくなるような、そういう感じがすることが多いからです。あるいは、別のときは悪循環の渦。あのハムスターのかごに入っている廻っても回っても終わりがない円の運動器具。ずっと足を廻しつづけてしまうハムスターいるでしょ?けなげなやつ。ああいう感じになってしまっても、自分でわからない状態になってしまうのがコワイです。自分が自分に囚われすぎることが怖いのでしょうね。

そして物事をやるときにシステマティックになりきろうと努力します。掃除機はすごく嫌いなのです、私。というか、掃除全般がとっても嫌いなのです。キリがないからです。けれどもやりはじめの最初には、「よっしゃ、ここからやればきれいになるよ♪」と楽しくもあるわけです。次はここで、その次これね、この洗剤でぇ、とかやってるうちはいいのです。でも、掃除についてアタマを使わなくなると身体が勝手に動くようになって、また自分のことやいろいろな想いがうががががががぁ!とアタマに。こうなると掃除していることを忘れてしまいます。そして掃除は終わっている。だからいつも掃除をしたという感覚がなくていかんのです。なので、私はなるべく西さんか留学生のOくんと競争しつつやります。そうすると掃除のことだけ考えていられるからです。短い時間でも済みます。おかしな理屈でしょうか?でも自分が自分であることを忘れていますね。作業のこと、効率的にやること、時間のことなどなどにアタマが独占されています。

エクササイズもそうなのですねぇ。最初はいいのです。これくらいやればここの筋肉が♪とか、何分やると炭水化物じゃなくて脂肪が燃え始める♪とかやっているのですが、トレッドミルであろうが水泳であろうが走ることや歩くことであろうが、単調になってそれを繰り返せばいいだけだとアタマを使わなくなるわけです。そうするとまた雑多なことがアタマに入ってきます。自分を意識しすぎてしまって、対象物から考えが外れていくのですね。うーん、どうしてなんでしょ。ランナーズハイのようなアドレナリンがたくさん分泌される前になんとなくこういう状態になってしまうのは、不幸なんだろうか?滅多にすんごい気持ちいい!ということに遭遇しないのですが、たま~にあるので健常なときはエクササイズの鬼になってました。待ちわびている状態ですな♪でもあのエクササイズハイを得られた瞬間はすごいのです。逆らえない気持ちよさで、徹底的に自分が自分であることを忘れる瞬間です。

料理もそういう傾向はあるのですけど、ひとつひとつの作業が短いでしょ?切る・火を使う・冷蔵庫を開くなどなど、いろいろなコンビネーションが必要とされてあーんまり単調である時間が短いのです。だから救われてるのか?と思ったりします。それに使っているものも何だか雑多です。で、質としても、がんばればそれなりに短い時間で済むし、キリがないってことがそーんなにないのですね。で、自分が自分であることを忘れる瞬間を提供してくれます。でも、何だかお得なのは、最後には料理がそれなりにがんばったなりにできていて、すごくインスタントな結果がVoila!(フランス語でいちばん便利な言葉じゃないか?これ。何でも使うみたい…。ほら!とか、そう!とか、できた!とか?ニュアンスは日本語にあるか?)って感じです。いいですねぇ、自分が自分であることを忘れる瞬間がわりと短いのに成果があるのって何だかやたらと得したような気持ちになります。

お化粧っていうやつもあります。最初のうち鏡を見ているとそこに見えている自分の顔にけっこううんざりします(爆)←するなよなぁ…。けれどもやりはじめるとファンデーションをでこぼこに塗ってるじょ☆とか、こんなところに影をつけてぇ!とかやっていると自分の顔なのに何だか対象物になってきます。しかも全体図を見ていなくてやっている箇所をしつこく見つめている時間のほうが長いので、かなり夢中になれるのですが、色・光・道具・化粧品の種類・量とその質なんかのコンビネーションがばしばし試されていて、自分のことなんか考えていられなくなるわけです。鼻がうんぬんとかいうわけじゃなくて、それはもうどこかの建物にペンキを塗っているくらいに、自分のことじゃない距離感まで出てきてしまうのでした。変だろうか?でもけっこう自分が自分であることを忘れる瞬間が続くのです。で、完成したときに、あれ、これ私じゃん…と思ってまたがっくりしたり、けっこう満足したり、という繰り返しですねぇ。

映画もいいですね。2時間前後でその主人公や自分のマインドがなぜかセットしてしまった物事にものすごく強く引き込まれます。そうすると考える間もなく感じているわけで、感覚器官をびりびり使っているじょぉ!という状況になって、自分だったらどうするだろうか?はその瞬間にはありません。景色なんかも「ここはどこだったっけ?」とはたまに思ったりしますが、別段真剣に考えようとはしないで、少し記憶させて映画が完結してから記憶をたどってあとから考えようということになります。対象物があくまで自分ではなくて、他の人間なので、何が映画のなかで起きても刺激にはなるのだけれども、自分を中央に置いて意識する瞬間はほぼありません。共感しているのでしょうけれども、それは映画が終わったあとに考えてみないとわからないことです。いいですね♪

両横綱は飲酒と睡眠でしょう♪

お酒を飲んでいる最中はそうでもありません。ちゃんとお話してMingle(混ざる)していて、いろいろなことを考えています。自分と他人の境目を意識して、伝えるための作業が延々と続きます。目の前にはおいしそうな肴もあってついついそれを忘れないとうまく説明がつかないくらいに難しい話をしたりもします。そんなことするからいかんのかなぁ…(汗)。とかく人の話を聞くにはいろいろなことをアタマの引き出しから取り出して、それに応えます。やっぱり私がどう考えるのか、ということを伝えるのはそれなりに楽しいですが、私が私でいる瞬間であります。しかし、どうでしょ。時間が経ってきてアルコールが身体中に廻ってくると、何だかどうでもよくなっちゃうじゃないですか。いつもいつも規範を守らないとまずいことしちゃうだろ…←過去の実績あり(汗)、と思っているので、そのこだわりみたいなもんから解放されつつある、あのしびれるような自意識の引き潮はとっても快感なのです。そしていつしか飲みすぎると自分を完璧に忘れますな。薬物効果でしょ。でも忘れるわけですよ。これがいい!すごいすごいすごい快感なわけです。

眠りもそうです。日常使っている意識の下に眠っているモノと遭える時間なのですが、実際にそれを覚醒したときに憶えているとは限らないというギャンブルつきです♪うーんと眠くならないとなかなか寝れないのは、私がハムスターになるからなのです。ぐるぐるぐるぐるいろんなことを考えてしまいます。本も時として有効じゃないことがあります。テレビもあんまり有効じゃないときがあります。そういうときには寝付けないので何かやりますが、それがまたハムスター的行為だといけません。疲れるまでの時間が短いといけませんね。とっとと眠るべきなのですが、自分がUniverse(宇宙)のCenter(中央)にいることを感じてしまうイケナイ瞬間がずーっと続きます。そして「私は不眠症じゃないのか?」なんていけないことになります。けれども、もしも何だかすごいところを突けてすんなりすすすぅ~っと眠れるとこんなに気持ちのいいことはないのです。このギャップ。ハムスターになっていたあとの、自分を忘れている時間♪アタマの温度がひやひや~っと冷えていくのが朝起きたときにわかる感じですね。ああ、おひるねはもっとそういう感じです、成功する例だと。

実は勉強もなぜ好きなのかというと、自分が中心ではないからなのでしょう。本もそうです。瞑想ができない哀しい性なのですね、私。でもみんな大なり小なりそういう渦うずに巻き込まれませんかぁ?私は囚われてしまってるんで、どうもこういう細かいことをくだらなくこうして考えてしまうわけです。というか、これがくだらないことだなんて、けっこう思ってもいないところがミソなのかもしれません。だからよけいに囚われやすいんでしょう。この法則はきっとコワイもの見たさ、と言うんじゃ?

あ、そういえば、麻酔はかなりこれでした♪ま、手術が痛かったからその後はすんごい自分が自分であるんだけれどもぉ、でも入っていく瞬間はおサルにハンマーでアタマ殴られて気持ちよかったですから。

今、この瞬間にはこんなことを考えているのですが、さっきは山ほど料理を作ったし、活字を読みつつシャワーを浴びました。救いはあります。そして私はまたハムスターを避けるために、今夜は飲酒します。そしてそのまま心地よい眠りに就くのであります♪

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