なぜダイエットは「明日から」になるのか?

「今日は特別だから。明日から本気でやる!」 この言葉を、何度言っただろうか。

ダイエットに限らない。英語学習も、運動習慣も、早起きも——「明日から」は、人類が最も頻繁に使う約束のひとつだ。私の中で多いのは、断酒(笑)。お酒を完全にやめるなんて無理ー!(笑)

そしてその「明日」は、なかなか来ない。

これは意志の弱さではない。脳の仕組みの問題だ。

「現在バイアス」という脳の癖

行動経済学に「現在バイアス(Present Bias)」という概念がある。人間は、目先の小さな利益を、将来の大きな利益より過大評価してしまうという認知バイアスだ。

こんな実験がある。「今すぐ1万円」と「1週間後に1万100円」、どちらを選ぶか。多くの人が「今すぐ1万円」を選ぶ。1週間で1%の利息がつくにもかかわらず。

ところが同じ条件を「1年後と1年1週間後」に設定すると、後者を選ぶ人が増える。遠い未来のことなら少し待てる。でも「今この瞬間」のことになると、我慢できなくなる。これが現在バイアスだ。ここ、たった1週間の違いで、最初のQuestionと同じなんだけどね。(・・;)

ダイエットに当てはめると——「3ヶ月後に5kg痩せる」という利益は遠い未来にある。「今夜のケーキ」の快楽は目の前にある。脳は自動的に、目の前の快楽を選んでしまう。

「明日から」が止まらなくなる理由

もうひとつ、厄介なメカニズムがある。

「明日からやる」と決めた瞬間、人は安心感を得る。「決断した」という達成感の代替を、脳が感じるからだ。

まだやっていないのに、やった気になる。

この「決めるだけで満足してしまう」サイクルを繰り返すうちに、「明日から」は思考のパターンとして定着する。現状維持の心地よさを保ちながら、変わるつもりがあるという自己イメージも保てる。

英語学習でも同じことが起きる。「アプリをダウンロードした」「参考書を買った」——それだけで何か始めた気になって、実際には手をつけない。テニスだってラケットとウェアとシューズを購入するともうセットアップなのよねぇ・・・。

準備と実行の間に、大きな溝がある。

先延ばしProcrastinationを防ぐ3つの方法

では、どうすればいいか。意志力に頼らない方法が、研究によって示されている。

  1. If-Thenプランニング
  2. 「もし〇〇したら、△△する」と、事前に行動をプログラムしておく。
  3. 「ダイエットする」という漠然とした目標より、「もしお腹が空いたら、低脂肪ヨーグルトを食べる」という具体的な条件設定の方が、行動につながりやすい。
  4. 英語学習なら「もし電車に乗ったら、必ずアプリを開く」「もし朝コーヒーを飲んだら、英語の音声を聴く」——特定の状況と行動を結びつけることで、判断の余地をなくす。
  • 小さく始めること
  • 「完璧なダイエット計画」より「今日だけ糖質を1つ減らす」の方が、圧倒的に継続しやすい。
  • 英語でも「毎日1時間勉強する」という目標より「今日だけ10分やる」から始める方が、脳の抵抗が少ない。10分やり始めると、そのまま続けられることが多い。始めることが、最も難しい。
  • 環境設計
  • 意志力で誘惑に打ち勝とうとするのではなく、「誘惑が近くにない状態」を作る。
  • お菓子を買わない。スマホをリビングに置いて寝室に持ち込まない。英語の参考書を机の上に置いておく。
  • 意志力は有限だ。でも環境は変えられる。自分の意志を試すより、意志を使わずに済む状況を設計する方が、長続きする。

英語学習と「明日から」

「英語、明日から本気でやる!」 何度思っただろうか。でも今日この記事を最後まで読んだなら、「明日から」をやめるチャンスは今日にある。いや、今にある!If-Thenプランニングで、一つだけ決めてみてほしい。

「もし今日の夜、スマホを開いたら、最初の5分は英語の音声を聴く」

それだけでいい。完璧な計画はいらない。「明日から」を「今日から」に変えるのは、大きな決意ではなく、小さな設計だ。ひとつ成功したら、もう一回り自分に要求してみるクセをつけていけば、Baby Stepsは続いていくかもしれないよね。