英語学習前に考えてみる日本語力と本来の自分のスキル その12 自分の考えをきちんと伝えることができるか?
読む、量と質、書く量、本気で書く——そして「伝える」へ。伝えることは、知っていることの最終到達ポイントだ。どれだけ深く理解していても、それを相手に届けられなければ、持っていないのと変わらない。
私自身、これは何度も痛感してきたことで、準備した内容を完璧に理解していたはずなのに、相手の顔を見た瞬間、「あ、伝わっていないな」とわかることがある。逆に、たった一言、こちらが選んだ表現がぴたりとはまって、相手の表情が変わる瞬間もある。その差は、知識の量ではなく、「相手にどう届けるか」を考えていたかどうかにある。伝えようとして失敗した経験のほうが、伝わった瞬間よりもずっと多く、そのたびに「知っている」と「伝わる」は別物なのだと思い知らされてきた。
「考えをきちんと伝える」に必要な2つの能力
この「伝える力」を分解すると、大きく2つの能力に分けられる。
①メタ認知:自分の考えを把握すること。自分が何を知っていて、何を知らないかを正確に理解する力。ここが曖昧なままだと、そもそも「何を伝えたいのか」が自分でもわからない状態で話し始めることになる。
②Perspective Takingパースペクティブテイキング(観点取得能力):相手にわかる形に翻訳すること。相手の立場、背景知識、文化を考慮して、表現を選ぶ力。同じ内容でも、相手が誰かによって、届け方はまったく違ってくる。
興味深いのは、このPerspective Taking観点取得能力は読書を通じて鍛えられるという研究知見があることだ(7月3日の内容ともつながる)。物語を読むという行為は、常に「自分ではない誰かの視点に立つ」練習になっている。だからこそ、このコラムシリーズその8〜12は、「読み方→量と質→書く量→書く本気度→伝える力」という一本のIQ軸の積み上げとして構成してきた。読むことは、いずれ伝える力に還元される。
英語で「伝わる」とはどういうことか?
文法が正しいだけでは伝わらない。語彙が豊富でも、伝わらないことがある。相手の文化的背景を理解したうえで、自分の考えを相手の言葉の地盤に乗せてはじめて「伝わった」になる。
これは私が授業の中でも、常に意識していることだ。生徒に英語を教えるとき、正しい文を作ることよりも先に、「これは誰に向けて、何のために言う言葉なのか」を考えてもらうようにしている。文法的に完璧な英文よりも、多少ぎこちなくても相手の立場に立って選ばれた一言のほうが、実際の会話では圧倒的に強い。この「相手の言葉の地盤に乗せる」という感覚こそが、CSQ(Culture Switching Quotient)の核心にある問いでもある。
8月以降のコラムでは、この「伝える力」を実際の英語使用の場面に落とし込んでいく。言語は道具だが、道具の使い方には文化が滲む。その境界線を、次のシリーズで丁寧に解いていきたい。





