具体的自己投資:スキルの取得

スキル習得は、ただ繰り返すだけでは伸びが頭打ちになりやすい。心理学者アンダース・エリクソンが提唱した「意図的練習(Deliberate Practice)」という概念では、自分の弱点を明確に意識し、フィードバックを得ながら、少し難しい課題に挑戦し続けることが上達の鍵とされている。ただ長時間やる「量」より、どこが伸びしろかを意識した「質」のほうが、習得速度を大きく左右する。

趣味として楽しむ学びと、キャリアに直結させる学びとでは、投資の仕方(時間配分・優先順位)も自然と変わってくる。趣味の学びは「できなくても楽しい」ことが目的になり得るが、キャリア目的のスキル習得は、どうしても「できるようになるまでの期間」を意識せざるを得ない。この違いを最初に自覚しておくと、途中で挫折しにくくなるとも言われる。

「守破離」という茶道・武道由来の言葉がある。まず型を守り(守)、次に型を自分なりに応用し(破)、最後に型から離れて独自のスタイルを確立する(離)という、スキル習得の3段階を表す考え方。今、自分がどの段階にいるかを意識するだけでも、スキル習得への焦りが減ると言われる。

スキル習得のもうひとつの落とし穴が「初心者の停滞期」。最初の数週間は伸びを実感しやすいが、ある程度基礎ができた後に、一時的に成長が止まったように感じる時期が訪れることが多い。実際には内部で地道に統合が進んでいる時期であることが多く、ここで諦めずに続けられるかどうかが、習得できる人とできない人の分かれ目になるとも言われる。

スキルの選び方そのものも、自己投資としては重要な判断になる。今すぐ必要なスキルを習得する「即効型」と、5年後・10年後に効いてくる「複利型」のスキルとでは、投資としての性質がまったく違う。目の前の忙しさに追われていると、つい即効型ばかりを選びがちだが、長期的なリターンを考えるなら、複利型にもあえて時間を割く価値があるとされる。

読書が「知識のインプット」だとすれば、スキル取得は「使える形へのアウトプット変換」に近い。とはいえ、始め方はどちらも同じでいい。読書も1日数分から始めればいいのと同じで、スキル取得も小さく始めて毎日続けるほうが、結局は力になる。貯金だって、まとまった額を一度にではなく、1日100円ずつのほうが確実に貯まる。小銭をまとめて使うのが案外やりにくいのと同じで、大きく構えようとすると続かない。小さく、毎日。これが自然な自己投資の形なのだと思う。

実例をひとつ挙げると、私が今取得中だと感じているのは中国語のリスニング。Reel Shortというショートドラマアプリで、1分×5話×4-5本を毎日見ているだけなのだが、字幕なしでも拾える単語やフレーズが確実に増え、音自体はもう完全に聴き取れるようになった。特別な勉強法ではなく、ただ毎日同じ習慣を続けているだけ、というのがポイント。

一方で、苦労している(というより、まだ挫折し続けている)のが運動系のスキル。チョコザップ、スイミング、いろいろ試してはうまく続かず、今も方法を探っている最中(笑)。今のところ一番良さそうだと思っているのは、iPhoneの画面をTVに共有して、運動系のアプリに申し込むというやり方。ただ、これもまだ実行できていない。停滞期どころか、まだスタートラインにも立てていないのだけど、それもまた自己投資の正直な過程だと思う。