それは8月23日から25日の2日間に渡った45時間ものことだった・・・。

うちには3匹の猫がいる。北斗、鈴音、そして夏梅。この3匹の中で、ジャンプ力と度胸がダントツで飛び抜けているのが夏梅だ。たぶん3mくらいの高さなら、迷いなく飛ぶ。今回の脱走も、案の定ベランダから。日頃から網戸を爪でガリガリやっているのを見ていたので、たぶんあれをこじ開けたんだと思う。

引っ越してきてから数か月、実はもう何度もあちこちから脱走されている。前回は半日ほどで戻ってきたので、今回もそのくらいだろうと最初は高をくくっていた。だから今回も、正直「またか」という気持ちと、「今回はどれくらいで戻ってくるかな」という妙に冷静な気持ちが同時にあった。こちらもすっかり場数を踏んで、脱走されたときの動き方だけは「準備万全」の域に達している(笑)。とはいえ、いくら準備万全でも、相手は言葉が話せない。どこに行ったのか、何をしていたのか、本猫に聞くわけにもいかず、結局最後までわからないままだった。

23日の夜に出て行ってから、丸1日経っても戻ってこない。夜になるたびにベランダに出て名前を呼んだり、懐中電灯で近くの植え込みを照らしてみたりしたけれど、返事はなかった。さすがに心配になってきて、28時間を過ぎたあたりで苦肉の策に出た。北斗と鈴音を外に出して、「木陰とか、ビルの地下とか、見てきてくれる?夏梅、探して!」と、真剣にお願いしてみたのだ。

結果から言うと、全然アテにならなかった(笑)。2匹とも、少し外をうろうろしたと思ったら、夏梅がそこにいないとわかった時点で、もうあっさり探すのをやめていたと思う。今にして思えば、あの熱量で外に出したところで見つかるはずもなかった。

夏梅が戻ってきたのは、北斗がテンなのかハクビシンなのか、何かと追いかけっこをしている、まさにその隙間だった。姿を見た瞬間、正直ほっとするより先に驚いた。すごく痩せていて、見るからに疲労困憊。水より先に、まっすぐごはんに向かっていった。普段はほとんど見向きもしない缶詰のごはんを、ものすごい勢いでむしゃむしゃと食べていた。よほどお腹が空いていたんだと思う。

食べ終わったあとも、いつもよりずっと甘えん坊になっていて、そのあと12時間くらいはずっと私にぴったりくっついてきていた。ふだんはわりと自立している子なので、その甘え方だけで、外でどれだけ心細かったかが伝わってくるようだった。抱っこしても嫌がらず、むしろ自分から潜り込んでくるくらいで、いつもの夏梅とは別の猫みたいだった。

45時間、ひやひやしたし、心配だったのは間違いない。それでも不思議と、必ず戻ってくるという確信だけはずっとあった。根拠なんてないのだけど、これまでの脱走の記録がそう思わせてくれていたのかもしれない。信じて待つしかない時間というのは、人間相手でも猫相手でも、案外似たようなものなのかもしれないと思ったりもした。

……ちなみに、この一件で、同居人の高橋くんとの関係は少しだけ冷えた(笑)。一緒に探しに行ってはくれたものの、その熱量が私に比べて明らかに低かったので。今度こそ夏梅がいなくなったら、もう少し本気で探してほしいと、心の中でそっと思っている。次の脱走が起きないことを祈りつつ、我が家の網戸強化計画は、また振り出しに戻った。