「わからない」の中の51%と99%
現場にはスリランカ人をはじめ、いろんな国から来たスタッフがいる。ラオス語ができる、英語ができる、そう言われるとつい「じゃあ意思疎通は問題ないな」と思ってしまう。でも実際はそう単純じゃない。
CSQ(Culture Switching Quotient)の考え方に、TPOP というものがある。Time、Place、Opportunity、Person。同じ言葉でも、いつ、どこで、どんな状況で、誰に対して使うかによって、伝わり方も適切さもまるで変わる、という視点だ。今回の現場は、まさにこれを体感する毎日だった。
一番面白かったのは、「わからない」という一言の重さだ。日本人のスタッフが「わからない」と言うとき、それは51%わからないのか、80%なのか、99%なのか、本人しかわからない。数字にして言ってくれるわけじゃない。でも周りは、その曖昧な一言から、どのくらい説明を補えばいいのかを察しなければいけない。
これは日本語話者同士だと、ある程度の”あうん”の呼吸で成立してしまう。でも多国籍な現場では、その曖昧さがそのまま伝わらない。はっきり数字やイエス・ノーで確認してくる文化の人からすると、「わからない」だけでは情報として足りないのだ。
通訳として間に立っていると、この曖昧さの翻訳こそが一番難しい。単語を置き換えるだけでは足りなくて、「この人の”わからない”は、たぶん8割方わかっているけど確認したいだけの”わからない”だな」というところまで読み取って、伝え方を変える必要がある。
言語ができることと、伝わることは、必ずしもイコールじゃない。今回の現場は、その違いを何度も思い知らされる日々だった。




