現場では、スタッフ全員にキャップとユニフォームが配られている。ユニフォームは鮮やかな紫色で、レインコートにもなるパーカーもセットになっている。ところが、実際にキャップをかぶっている人は、思っていたよりずっと少ない。せっかく配られているのに、律儀に身につけている人のほうが少数派、というのは、ちょっと意外な光景だった。

私自身、あのパーカーはまだ一度も着ていない。理由は単純で、暑いからだ。この気候の中であれを羽織るなんて、ちょっと考えられない。それなのに、同じ場所にいて、寒がっている人がいるのには驚かされる。同じ気温、同じ日差しの下にいても、体感はこれほど人によって違うものなのかと、あらためて実感した。

そしてもう一つ面白かったのが、色の好き嫌いだ。Venue ManagerのIriaさんは、この紫色が好きだと言っていた。一方で、副の立場にいるフランス人のNoemieさんは、はっきり「嫌い」だと言っていたらしい。同じユニフォームを、毎日同じように着る立場にいながら、その色そのものへの感情はまったく逆というのが面白い。誰かに配られたものを、そのまま好きになる人もいれば、どうしても好きになれない人もいる。当たり前のようで、実際に目の当たりにすると、なんだかしみじみしてしまう違いだった。立場も国籍も違う二人が、まったく同じ色に対して正反対の感情を持っている、というのも、なんだか象徴的な気がする。

考えてみれば、支給品というのは本来、選べないものだ。デザインも色も、着る側の好みとは関係なく決まっている。それでも、その中でどう振る舞うか——素直に身につけるか、暑いからと理由をつけて着ないか、色自体を嫌いだと公言してしまうか——には、その人らしさがにじみ出る。同じ制服という「型」を与えられても、そこからはみ出す部分にこそ、その人の個性が見える気がする。

暑さの感じ方も、色の好みも、結局は個人差でしかない。それでも、こうして同じユニフォームを着て、同じ現場に立っている。全員が同じ「制服」をまとっていても、その内側にある感じ方や好みはバラバラなままだ。そのバラバラさが、むしろ現場の空気を面白くしているように思う。キャップをかぶるかどうか、パーカーを羽織るかどうか、色をどう感じるか——そんな小さな選択の積み重ねを眺めているだけで、一日があっという間に過ぎていく。