2006年に書いた文章です
何を以って「普通・当たり前・そこそこ・常識・当然・真ん中・人並み・中流・平均」などなどという言葉を会話で使っているのか、わからない場合のほうがずっと多い私のほうがアタマがおかしいのでしょうか?私はそういうやたら便利な全人口1億4千万人(日本)そうざらえみたいな言葉にたいへん抵抗があります。
前後の内容で対象人口の質と量(数)がわかっている場合にはかなり的確に言わんとしていることがわかる場合もあります。話している内容や書いてある内容によっては数字というのはかなり論理的なものです。グラフなんかがついているとさらにわかりやすく、Mやμ(平均値)とPやp(資料人口)が示されていたり、調べた情報元があれば、もっと信頼できます。生活に必要な程度の統計の見方は中学卒業までの算数と数学で習っていれば幸いなのですが、文部省の指導要綱はどんどん変わっていきます。義務教育を最低限終えた国民全員に同じ理解があるわけでもなく、パブリックで文字を数字化したものへの「印象」「見方」「感じ方」、さらに「理解」はさまざまになります。
だからおもしろいのですが、おもしろい影に弊害もたくさん生まれます。
義務教育のあと、一切学習をしなくても生きていると思っているのは大間違いで、世の中の変化に対応するための柔軟性は生き延びるために必要です。机の上でなくても日々学習していることを実感している人も多いと思います。「算数や数学が苦手だった」とおおっぴらに言っているあなたもあなたも、実際にお金を使って買い物をしたり、税金を納めていたり、子どもの成績表も見ているし、新聞にある数字にさらされているはずです。まかり間違えば、あなたの意見や行動までもがどこかの誰かが出した数字にもなっています。国勢調査もその一端です。それについて知らないことは自衛していないこと、となります。事実を事実として見ているか、それとも数字アレルギーでアタマのなかで情報処理ができないままに、文字化された統計を鵜呑みにしていないか、考えてみましょう。
(難しいことを書き始めてしまったな、と思いつつ、これだからお絵描きセットが必要なんだよ、と開き直っている最中です…汗。)
ちなみに私も4年ほど前までは「私は数学まったくだめ。得意な人に任せるわ♪」とケツをまくっていました。11年前に航空学校に通っていたときにも「これ以上の計算はだめ。電卓がないと死んじゃう」と笑っていました。レストランに行ってチップの計算をするときも暗算に時間がかかっていた自分を呪っていたし、食べ物以外にかかる消費税を踏まえて買い物の値段を考えることができない自分をうらめしく思っていました。
でもやればできるんです。保証しましょう♪映画、“Stand and Deliver”(邦題わからず)では、LAの貧しい地域に住む高校生たちが、奇跡を起した実話をみごとに再現しています。私はそれを見て、「私にも数学はできるな」と思いました。りんごを使って割り算をしていた彼らが2年足らずで微分積分ができるようになるわけです。他の勉強を犠牲にするほどに数学への情熱も必要性にも迫られてはいませんでしたが、持てる時間内で数学をもう一度好きになるための勉強をはじめてよかったと思っています。それはその子たちや私が特別に賢かったからではないです。先生や環境や準備ややる気の問題のほうがある程度の結果を生むためには有効です。けれどもこれも厳密には言えることではありません。ケースバイケースです。ひとからげにはできない問題です。
今話そうとしているのは統計学という分野ですが、これの意識が低いままに政治も世情も性格も収入も厳密に自分がどこに位置しているか、闇の中に置き去りにされてそれを不安に思わされる場面に多く遭遇することになります。私は自分の学力・収入・政治へのスタンス・性格・日本人としての在り方などなどにまだ多少の不安や問題点を持っていますが、少なくとも芯の部分や方向性については自信を得ています。税金をプロに管理してもらうことを頼んでもその書類やコンセプトは理解できるし、銀行の仕組みがどうなっているかもわかります。お金を借りたらどのくらいの利子を払い、その変動についての知識も得られました。他社比などの広告に惑わされることもなくなり、事実の素顔を掘り下げるための準備はできたと思います。人間の行動を数字化することに対しての見方にも、人間の行動を文字で数や質を表わしていることに対しての見方にも、すっきりとしたアタマのなかでの体系的なグラフが描けるようになりました。
たとえば、次の文章の真偽を見てみましょ。
① アメリカ人は英語しか話せない。② なぜならば英語は世界の公用語であり、彼らは英語で生まれ育っているので外国語を習う必要性やその目的を見出せない。
① は結論、思うところをはっきり述べていて、②でその理由を簡潔にけれども証拠を2つはっきりと示しているように見えます。この語調でこのように書くとなぜだか騙されてしまう人もいます。英語が世界規模の会議で共通語として使用されていることは事実です。その様子をニュースなどで見て納得する人も多いでしょう。
けれどもアメリカ人とは誰のことを指しているのでしょうか?市民権を保持している人々?それともアメリカを住居としている人々?では二世や三世は純粋な意味を持ったアメリカ人としてひとからげにしてもいいでしょうか?移民の国アメリカでは、まだまだ一世と呼ばれる人たちが増えています。一世が移民してきて、すぐに生まれた二世はグリーンカード保持者になります。21歳までは市民権を持たないからアメリカ人ではないでしょうか?(市民権を選ぶか、どこの国籍を取るかは21歳で決めます。)親がそこに生涯住む(あるいはしばらく住む)と決めていればアメリカ人?その期間はどの程度厳密なものでしょうか?駐在が20年続いている日本人夫妻の子どもはアメリカ人でしょうか?まずここに穴が大きくあります←話されている人口がはっきりと示されていない。
次に「英語で生まれ育っている」というのはどういう意味でしょうか?カリフォルニアにはメキシコからの移民をはじめ、ベトナム・香港・メインランドの中国などからの移民がとても多いです。日本の企業の進出もあり学齢にある日本人の子どももたいへん多いです。学校で英語で暮らす時間が多いことが「英語で生まれ育っている」ことなのか、家庭でどの程度の母国語を話しているのかに依るものなのか、このへんの厳密さもわかりません。家庭によっては二世でも親の出身の言語を話せない子どももいれば、7代続いていても家庭内では英語を話さない家庭もありますが、多くの人々は市民権を取得しています。他にもいろいろなケースが考えられますが、2つ以上の言語が話せる人というのはアメリカに住居している人でもわりと探せばいるものです。それもどこを探すかによります。
外国語への必要性や目的は、母国語が公用語であるから、という理由で左右されることではなかなかありません。自分が日常からかけ離れた趣味や情熱があることを想定してみてください。それが必要性をもたらしたり、大きな動機の支えになることは多いことでしょう。音楽であったり、瞑想やスポーツであったり、宗教要素のある教えであったり、ダンスやその他に言語が必要になることもあれば目的になることもあります。一概に公用語という汎用性だけで語れる物事でないことはわかるでしょう。確かにそれにきっちり絵に描いたようにあてはまるアメリカ人と呼べる人もいることはいます。けれどもすべてではないです。
このように「~人は○×」「主婦は○×」「日本人ビジネスマンは○×」などなどは簡単に言えることではないのです。大きな範囲で言えることならいいであろうと思っている人もいるようです。便宜的なことならばいいでしょう。前提としてすべての人口にあてはまらないと読者や聞き手が理解しているならばいいでしょう。詳細について考えたいためのモノローグならばいいでしょう。個人的なケーススタディの普遍性を見出すためならば体系的なことを見せるために有効なことでしょう。
でもこれは決して結論にはなり得ません。平均値はあくまで平均値です。そこに入る人々を安心させ、入らない人々を不安に陥れ、あるいは逆に、そこに入る人々を落胆させ、入らない人々を高慢にします。読み物や資料やエッセイやインターネットのポスティングはみな、普遍性があるわけではないのです。ああ、こういう意見もあるのだな、という一票にどの程度の重さがあるのかを決めるのは受け取る側の心にのみ反映します。それが不安であるなら、疑問があるなら、どんどん捜し求めて質問をしたり、なぞを解く態度がないと平均化される側・受け止める側のみに終始してしまうことになります。
私のこのエッセイもただの一票です。ゼロか1の有るか無いかだけを受け止めてくれてもかまわないし、他に何かを読み取ってくれてもかまいません。それが平均値にあるのか、多少あるいは大きくずれたところにあるのか、それを判断するのも読者次第です。そのためにBBSで質問に答えられるように、意見を聞けるように、一方的でないように心がけています。
簡単な統計学は本屋さんで探した段階的に理解が深まるような構成になっている本を一冊、自宅で週に2時間、半年もやれば身につきます。私が日本に帰国して、お酒を浴びるほど飲まない前にだって簡単に30分ほどで説明したっていいです(爆)。いっしょに本屋さんに行ってもいいし。私より碧さんや広志さんのような数学に強い強いお人たちもたくさんいます←BBS参照♪きっと「サルにもわかる統計学」を説明してくれるでしょう☆
そうやって自己確立には数字も必要になるってことがわかったのは、この4年ほどの実感です。そして学習をすることだけはどうしても止められないと思っている次第です♪
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